遺言の効力はいつから発生するのか
1 遺言は死亡の時点で効力が発生する
遺言については、遺言を書いた人が死亡した時点で効力が発生することとなります。
裏返せば、遺言を作成した人が死亡しない限り、遺言の効力は発生しないこととなります。
このため、遺言を書いた人が存命である間は、遺言で利益を受ける可能性のある人であっても、遺言に基づく請求は一切できないこととなります。
当然ながら、遺言で利益を受ける可能性のある人は、遺言を書いた人が存命の間は、遺言内容を実現するための請求をすることはできません。
それでは、遺言で利益を受けるはずだった人が、遺言の撤回等により、利益を受けることができなくなってしまった場合には、何らかの請求を行うことはできるのでしょうか?
たとえば、「Aにすべての財産を相続させる」という遺言が作成されたとして、その後、この遺言が撤回された場合には、Aは、その補填や損害賠償を求めることはできないのでしょうか?
この点についても、遺言を書いた人の生前には、遺言の効力は発生しないとの理由から、補填や損害賠償を求めることはできないということになります。
結局、遺言が法的な意味を持ってくるのは、遺言を書いた人が死亡した後であるということになります。
2 遺言の撤回も自由に行うことができる
生前には遺言が効力を生じないことと同じ考えとして、遺言を書いた人は、遺言を自由に撤回することができるとされています。
遺言を撤回する場合には、新たに、撤回のための遺言を作成しなければならないという方式上の制限はありますが、遺言を書いた人は、いつでも、どのような理由であっても、自由に遺言を撤回することができることとなります。
ところで、遺言の中には、負担付遺贈というものがあります。
Aに財産を相続させる代わりに、Aに一定の負担を負わせるものが、負担付遺贈になります。
こうした負担付遺贈についても、自由に撤回することができるとされています。
このように、遺言は、遺言を書いた人の生前は、法的効力がなく、撤回も自由となります。