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上手な贈与の利用方法

  • 文責:代表 税理士 西尾有司
  • 最終更新日:2022年8月29日

1 贈与を利用する目的

相続税対策で贈与が利用されることがあります。

相続税は、被相続人が相続時点で有している財産に課税されます。

相続税が累進課税の制度をとっていることから、被相続人が多額の財産を有していると、課税される相続税は、かなりの金額になってしまいます。

このように、多額の相続税が課税されることを避けるためには、被相続人が有している財産を、生前段階から、次に世代に移しておくことが考えられます。

そこで、被相続人が有している財産を次の世代に移しておく手段として、贈与が用いられることとなります。

もっとも、多額の贈与を行うと、今度は、多額の贈与税が課税されることとなってしまいます。

贈与税についても、毎年110万円の非課税額が存在するものの、累進課税になっていますので、多額の贈与を行えば行う程、さらに多額の贈与税が課税されることとなってしまいます。

有効に相続税対策を行うには、贈与を有効に活用することが必要不可欠です。

ここでは、贈与を有効に活用する方法について、いくつかの例を説明したいと思います。

2 複数年で分けて贈与する

贈与税は、基本的には、毎年1月から12月までの1年間に贈与を受けた財産に対して課税されます。

このため、ある年に贈与を受けた財産と、次の年に贈与を受けた財産は、別々に課税がなされることとなります。

このため、複数年に分けて贈与を行えば、複数回110万円の非課税額を用いることができますし、課税される場合の税率も抑えることができます。

ただ、毎年、同額の贈与を同時期に繰り返していると、連年贈与と扱われ、1回の贈与として課税がなされる可能性がありますので、注意が必要なこともあります。

3 複数の人に贈与する

贈与税は、1年間に贈与を受けた財産について課税されます。

1年間に贈与した財産ではなく、1年間に贈与を受けた財産に課税されるのです。

このため、複数の人に贈与を行えば、複数の人の110万円の非課税額を用いることができますし、課税される場合の税率も抑えることができます。

たとえば、将来相続人になる人だけではなく、その配偶者や子にも贈与を行うことが考えられます。

4 相続人以外に贈与する

贈与された財産については相続税が課税されないという話には、落とし穴があります。

それは、相続前3年以内に相続人に対してなされた贈与については、相続税の課税対象とされているということです。

このため、相続が切迫している状況で相続人に対して贈与を行ったとしても、結局、相続税の課税対象とされてしまい、相続税対策にならないということが起こり得ます。

相続人と同じく、生命保険金の受取人に対して相続前3年以内に贈与がなされた場合も、同様に、相続税の課税対象となってしまいます。

他方、相続前3年以内になされた贈与であっても、相続人や生命保険金の受取人以外の人に対して贈与されたものであれば、相続税の課税対象にはなりません。

この点を踏まえると、相続が切迫している場合には、相続人や生命保険金の受取人以外の人に対して贈与するのが、相続税対策としては有効であることとなります。

たとえば、将来相続人になる人の配偶者や子で、生命保険金の受取人になっていない人に贈与を行うことが考えられます。

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