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タンス預金は相続税対策になるのか
1 タンス預金は節税対策にはならない
どのようにすれば相続税の節税対策になるかについて、ご質問をいただくことがあります。
タンス預金についても、節税対策になるかどうかについて、ご質問いただくことがあります。
結論を述べますと、タンス預金は、決して節税対策にはなりません。
タンス預金は、預金口座等にお持ちの資産を、現金として保管しておくことを言います。
文字通り、タンスに現金を保管するだけでなく、ご自宅の中に現金を保管することを、タンス預金と言います。
タンス預金は、もともとは預金等であったものを、現金で保管しておくことに他ならず、これにより、お持ちの資産の総額が変動するわけではありません。
相続税はお持ちの資産の総額に対して課税されますので、資産の総額に変動がない以上、課税される相続税にも変動は生じないこととなります。
以上から、タンス預金は、決して節税対策にはならないこととなります。
2 タンス預金をすれば脱税が可能?
このような話をすると、預金等をタンス預金にしてしまい、これを税務署には一切報告せずに申告書を作成すれば、お持ちの資産の総額を少なく見せることができ、相続税を軽減することができるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、記載上の資産の総額を減少させれば、相続税の計算結果は少なくすることも可能ではあります。
しかし、このような行為は、本来、税務署に報告すべき資産を隠して申告することに他ならず、脱税になります。
つまり、犯罪になるおそれがあります。
また、税務署にタンス預金を察知されてしまうと、本来、納めるべきであった税金を追加で納めることに加えて、重加算税(過少申告だと35%)や延滞税も納めなければならなくなってしまいます。
このように、タンス預金による脱税は、法律上、決して認められている行為ではなく、重い制裁が科される可能性のある行為になっています。
脱税が犯罪だとしても、ばれなければ良いとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、以下で述べるとおり、タンス預金は、最終的には税務署に察知されてしまう可能性があります。
3 タンス預金を巡る攻防
以下のとおり、税務署側は、いくつかの手がかりから、タンス預金の存在を察知してきます。
このような場合には、税務調査がなされ、税務署側と相続人との間でタンス預金を巡る攻防が繰り広げられる事態となってしまいます。
① 被相続人の口座からの多額の出金
タンス預金を形成するためには、多額の預金等を口座から出金する必要があります。
このように、生前に多額の出金がなされており、申告書では何らの説明もなされていないとなると、税務署側が税務調査を実施し、出金された預金等の所在を調査しようとします。
税務署側は、税務署側の権限で、金融機関等の出入金記録を取り寄せることができますので、多額の出金がなされていることを察知し、税務調査を実施してくる可能性があります。
このような税務調査の過程で、ご自宅の確認がなされ、現金が存在することを発見されてしまうと、結局、追加課税等を受けることとなってしまいます。
また、現金の存在自体は発見されなかったとしても、多額の不明出金があることを理由として、修正申告を求められ、結局、追加で納付等をしなければならなくなる可能性もあります。
② 相続人の口座への多額の入金、相続人による効果品の購入
多額のタンス預金があったとしても、その後、タンス預金はどうなるのでしょうか?
安全性を考えると、いずれは、相続人の口座に入金されることが多いかと思います。
しかし、税務署側は、税務署側の権限で、相続人の口座の出入金記録も調査することができますので、多額の入金がなされると、税務署に察知される可能性があります。
また、タンス預金を元手に、高価な物を購入した場合についても、税務署側は、税務署側の権限で、購入の時期、金額等を調査することができますので、これらの情報に基づき、税務調査が実施されることとなる可能性があります。
税務署側が多額な入金、高価品の購入を察知すると、税務調査がなされ、税務署側から相続人に対し、この入金、代金の元手が何かについて、説明を求められることとなります。
このような事態になると、入金や代金の元手についてどのように答えるべきか、回答に窮する状態に陥ってしまうでしょう。
たとえば、保険を解約した等、元手について嘘の説明をすると、今度は保険会社に調査し、保険の解約があったかどうかの確認がなされることとなります。
こうなると、分からないと回答するしかないこととなりますが、多額の入金や代金の元手が分からないという話も、通常ではあり得ない話です。
このように、不自然な回答しかできないこととなってしまうと、結局、追加課税等を受けることとなってしまう可能性があります。
もちろん、タンス預金をタンス預金のまま保管し続ければ、先に述べたような、入金等によりタンス預金の存在が察知されるという事態が生じることは避けられる可能性があります。
ただ、こうなると、いつまでも多額の現金を自宅に置いておかなければならないという状況になってしまいます。
消費したり運用したりできず、セキュリティも危ない多額の現金を自宅で保管し続けるような事態が生じることは、果たして、対策として意味のあるものなのでしょうか?
このように、宙に浮き続ける多額の現金が発生することは、問題の解決策として、実を結んでいるものと言うことはできないでしょう。
4 まとめ
結局のところ、タンス預金による脱税は、犯罪になり、重加算税や延滞税の課税のリスクを負うこととなる一方、あの手この手を使ってこれを回避しようとすると、まったく実を結ばない結末を招いてしまいます。
このような実を結ばない解決策を使うくらいであれば、もっと他に、法に抵触せず、税務署からも指摘を受けるおそれの少ない相続税対策がありますので、他の対策を検討することをおすすめします。
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