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相続税の申告期限の延長(数次相続の場合)
1 相続税の申告期限の延長
相次いで相続が発生することを、数次相続といいます。
現実には、被相続人が亡くなり、被相続人の申告期限が経過する前に、相続人の1人が亡くなることもあり、短期間で数次相続が起きることがあります。
このように、短期間で相次いで相続が起きると、相続税の申告の準備が申告期限までに間に合わない可能性が出てきます。
このため、申告期限が経過する前に数次相続が起きた場合には、一次相続についての申告期限は、二次相続についての申告期限まで延長されることとなります。
たとえば、次のような例を考えたいと思います。
・ 家族関係は、父A、母B、子C、子D
・ 父Aが2023年7月11日に死亡
・ 母Bが2024年4月9日に死亡
上記の場合、父Aの相続税の申告期限は2024年5月11日になります。
このため、母B、子C、子Dは、2024年5月11日までに、父Aの相続について、各自に課税される相続税の申告を行わなければならないこととなります。
ところが、母Bは、父Aの相続についての申告期限が経過する前に死亡しています。
このため、母Bの相続人である子C、子Dは、母Bの地位を引き継ぎ、2024年5月11日までに、父Aの相続について、母Bに課税される相続税の申告を行わなければならなくなりそうですが、延長規定により、母Bの相続についての申告期限である2025年2月9日までに、父Aの相続について、母Bに課税される相続税の申告を行えば良いということになるのです。
注意しなければならないのは、延長されるのは、あくまでも、父Aの相続について、母Bに課税される相続税の申告期限のみであるということです。
父Aの相続について、子C、子D自身に課税される相続税の申告期限は延長されませんので、子C、子Dは、2024年5月11日までに、父Aの相続について、子C、子D自身に課税される相続税の申告を行う必要があります。
2 相続税の申告期限の延長(相続人、相続財産に変動が生じた場合)
相続人、相続財産に変動が生じた場合には、相続税の計算方法が大きく変動するため、相続税の申告書を作成し直さなければならないこととなります。
しかし、申告期限の直前に相続人、相続財産の変動が生じた場合には、相続税の申告書を作成し直すことは、現実的に難しいです。
そこで、申告期限の1か月前までに、以下の事由等が生じた場合には、申請を行い、2か月間、申告期限を延長することができます。
・ 相続人の認知・廃除等により、相続人に変動が生じたとき
・ 遺贈にかかる遺言が発見されたとき、遺贈の放棄があったとき
・ 相続人となる胎児が生まれたとき
・ 相続財産の帰属や権利に関する裁判の判決があったとき
3 相続税の申告期限の延長(災害、疫病等)
災害、疫病等が発生すると、相続税の申告期限までに準備を行うことが困難になる場合があります。
このような場合には、税務署は、地域、時期等を指定し、相続税の申告期限を延長する措置をとることがあります。
たとえば、過去には、東日本大震災、台風19号による被災につき、相続税の申告期限が一律延長されたことがありました。
また、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、納税者から申出があった場合には、申告期限が経過したあとに申告がなされたとしても、申告期限内の申告と扱う措置がとられていました。
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