遺言
遺言とは
遺言は、思いどおりの相続を実現するための手段です。
たとえば、個々の相続財産について、相続人の間でどのように分けるのかを決めておくことができます。
このとき、ある相続人については多めに、ある相続人については少なめにというように、財産を分けることもできます。
さらに、相続人以外の方に財産を分けることもできます。
遺言を作る意味は、これだけにとどまりません。遺言を作ることによって、相続が始まった後に、相続人の間で紛争が起きることを、事前に防ぐことができます。
もし遺言を作らなければ、相続が開始すると、財産の分け方を決めるために、遺産分割協議をしなければなりません。
協議がスムーズにまとまる場合は良いのですが、まとまらなければ、遺産の分割方法を巡って、調停や審判で長期間にわたって争うことも、しばしばあります。
特に、事業を承継させる必要がある場合には、いったん紛争が起きてしまうと、事業に支障をきたし、事業を続けることが困難になることもあります。
そこで、遺言を作り、遺産の分割の仕方をあらかじめ決めておくことで、このようなトラブルを事前に避けることができます。
遺言の作成について
遺言は、自分で全文、日付、氏名を自書することにより作成することができ(なお、財産目録については自書する必要はありません。)、これを「自筆証書遺言」といいます。
しかし、自筆証書遺言を作るにあたっては、法律のルールを守る必要があります。
たとえば、遺言書を訂正のために書き換える場合でさえ、法律はルールを設けています。
このようなルールを守らなければ、せっかく作った遺言も、無効とされてしまいます。
また、遺言の文言次第で、遺言の内容が実現されなかったり、スムーズに実現されなかったりすることもあります。
公証役場に手数料を支払い、公証人に遺言を作ってもらうこともでき、これを「公正証書遺言」といいます。
公証人の面前で、一定の手続きに従って作成されますので、遺言が無効とされる危険性は低いといえます。
ただ、公正証書遺言については、証人が2人必要ですから、秘密保持の点で不安があるとされています。
また、公証人を呼んで、一から遺言を作っていくということはあまりなく、あらかじめ遺言の原案を作ってから、公証役場へ行き、手続きを進めることが多いです。
当法人のサポート
当法人では、遺言の作成を全面的にサポートします。
弁護士が相続についてのご希望を聴き取り、法律のルールにのっとり、トラブルをできるだけ避けられる遺言の案を提示させていただきます。
すでに遺言を作られている場合も、ご相談いただければ、法的視点からチェックさせていただきます。
公正証書遺言をご希望される場合にも、相続についてのご希望をうかがった上で、公証人に伝える遺言の原案を作成させていただきます。
証人2人についても、弁護士と事務員が証人として同行いたしますので、秘密が漏れるという心配はありません。
相続が始まった後に、遺言がスムーズに実現されるか不安がある場合には、遺言で弁護士を遺言執行者に指定することも、検討させていただきます。
遺言作成を依頼する専門家選びのポイント
1 様々な想定を行える専門家であること
遺言は、将来、相続が発生した際に、誰に財産を引き継ぐかを定めるものとなります。
遺言が意味を持ってくるのは、多くの場合、ある程度先のことになります。
ある程度先の段階に至るまでには、様々な変化が生じる可能性があります。
この点を踏まえると、遺言作成については、様々な想定を行うことができる専門家に依頼するのが望ましいと言えます。
たとえば、遺言により、誰かに財産を引き継ぐと定めたとしても、その人が遺言者よりも先に亡くなってしまうことがあります。
この場合には、その人が受け取ることになっていた財産は、基本的に、法定相続人が遺産分割をしなければならないことになってしまいます。
このため、予想していなかった人が財産を取得したり、遺産分割を巡り、紛争が長期化したりしてしまうおそれか生じてしまいます。
このような事態を避けるために、財産を引き継ぐものとされた人が先に亡くなった場合には、他の人に財産を引き継ぐと定めておいた方が良いことがあります。
また、遺言を作成しておいたとしても、財産を取得することができなかった相続人から、遺留分侵害額請求がなされることがあります。
このような場合には、遺留分に相当する金銭を準備しなければならなかったり、遺留分をめぐって紛争が長期化したりするおそれがあります。
このような事態を避けるために、どの相続人についても、遺留分に相当する財産を取得するものと定めておくことが考えられます。
場合によっては、生命保険によって財産を引き継ぐものとし、遺留分の問題を軽減するといった対策を検討することもあります。
2 税金についても検討できる専門家であること
一定額以上の相続財産がある場合には、相続税が課税されます。
相続税は、まとまった負担になることがありますので、納税資金をどのように調達するかを検討しておくのが望ましいでしょう。
あらかじめ、想定される相続税の額を算定しておき、遺言により、納税資金を賄えるだけの金融資産も引き継げるようにしておいた方が良いことがあります。
また、相続税の負担を軽減するための対策を用いることを前提として、遺言を作成しておいた方が良いこともあります。
たとえば、農地の納税猶予を用いる場合には、農地を長期間営農できる相続人に引き継ぐ必要があります。
このような場合には、あらかじめ、誰が農地を取得し、営農するかを想定しておき、遺言でその人に農地を引き継ぐものとしておく必要があります。
他にも、遺言で、小規模宅地等の特例を使える相続人に、自宅の不動産や事業用不動産を引き継ぐものとしておくことも考えられます。
遺言書作成の際に相続に強い専門家のサポートが必要な理由
1 遺言の相談をお考えの方へ
最近では、弁護士・税理士などの士業だけではなく、金融機関等でも遺言に関する相談を受け付けているため、遺言について誰に相談すればよいのか、お悩みの方もいらっしゃると思います。
結論から言いますと、遺言では、相続に強い弁護士と相続に強い税理士の両方に相談することが大切です。
2 相続に強い弁護士が必要な理由
⑴ 弁護士と他の士業との違い
遺言書の作成相談は、弁護士以外にも行政書士、司法書士や税理士などの士業も行っています。
ただ、そもそも法律相談を有料で行うことができるのは、「弁護士のみ」と弁護士法で定められていますので、他の士業が有料で行うことができるのは、あくまでも遺言書の作成手続きなど、一般的な内容にとどまり、個別具体的な法律相談はできないことになっています。
⑵ 弁護士と相続に強い弁護士との違い
弁護士に相談する際にも、相続に強い弁護士に相談されることをお勧めします。
一般的な弁護士事務所では、相続の案件を年に1~2件程度しか扱っていないところが多いですが、遺産相続の解決に力を入れている事務所では、年に数十件以上取り扱っているところもあります。
あまり相続案件に慣れていない弁護士に相談すると、相続に強い弁護士であれば当然に入れる条項が遺言から抜けてしまうこともあるようです。
例えば、子が親よりも先に亡くなってしまった場合、「親から子に相続させる。」という条項しか遺言書に入っていないと、基本的には、その部分の遺言書がなかったこととなり、相続人全員で遺産分割を行わなければならないこととなります。
そのため、相続に強い弁護士であれば、万が一に備えて、「仮に子が親より先に亡くなった場合は、孫に相続させる。」といった予備的条項を入れることを提案します。
相談した弁護士が相続案件に不慣れであり、このような大事な条項が抜けてしまった場合、後々取り返しのつかない事態になることもありますので、相続に強い弁護士に相談することをお勧めします。
⑶ 相続に強い税理士に相談すべき理由
過大な相続税を払うことなく、適正な相続税を支払うためには、的確な不動産の評価や各種の相続税軽減特例を使いこなす等、難易度の高い業務が求められます。
難易度の高い業務を正確かつスピーディーに行うためには、経験が求められます。
ただ、多くの税理士は、継続的に発生する法人や個人事業主の法人税・所得税の申告業務を行っており、単発的・偶発的に発生する相続税の申告業務を行うのは年に1回程度であることが多いようです。
相続税の申告を適切に行うためには、多数の相続税申告の経験を積んだ税理士など、信頼できる税理士に相談することをお勧めします。